PATRON 19




「タクシーもうすぐ着くんじゃないー?」



もうユノさんたちしかお客さんがいない店内。

厨房で片付けをしている俺のところにも
ハンナさんの声が聞こえてきた。


そっか、ユノさん飲んでたもんな、
タクシー呼んだんだ。






「チャンミンくん、
お見送りしてきていいよ!
俺がちゃちゃっとやっとくから。」



「…はい、ありがとうございます。」


オーナーにそう言われたら
出て行かないわけにはいかない。

誰にも気づかれないようにふぅーっと
息を吐いて厨房を出た。












笑顔を張り付けて店内に顔を出したのに
誰もいない。


やば、もうタクシー来ちゃった?




あーでも俺に声をかけないまま、
ユノさんは帰ったりしないはずだし…







って…何様だよ俺。

ごく自然にそんな風に考えた自分に呆れる。
勘違いするな、
ユノさんは俺のものじゃない。



「っ…」

自分で言っといてちょっと泣きそうになって
ぐっと唇を噛み締めた。

大丈夫、分かってる。

深く深呼吸をする。





ガチャっ






「チャンミン…?」



「ユノさん…」



「…どうした?
なんか、あったか?」



店のドアが開いて、
てっきりハンナさんだと思ったのに
入ってきたのはユノさんだった。




「…ヨンアさんは?」


「今、帰ったけど?
厨房に挨拶に行くって言ったんだけどさ
タクシー来ちゃって。

店の前の道路狭いし、
あんまり待たせておけなくてさ。

チャンミンにもオーナーにも
ご馳走様って伝えてくれって。

悪かったな。」



「あ、そんなことは、全然…。

ユノさん、
一緒にタクシー乗らなかったんですか?」



「え、俺?

だってヌナと家の方向全く違うし、
チャンミンと一緒に地下鉄で帰るよ。

なぁ、そんなことよりチャンミン、
なんかあった?」




俺と一緒に…




「いえ、なんでもありません。
ちょっとパソコン見過ぎですかね、
目が赤いですよね、俺。」




「あら、どうしたの、ドアの前で」


店の前を片付けていたらしいハンナさんが
入ってきて、何か言おうとしていたユノさんは
口をつぐんだ。


「なんでもないですよ。

あぁっ、ハンナさん、
外のメニューは重いから俺が片付けるって
言ってるじゃないですか!」



「大丈夫よ、これくらい。
でもありがとう。」



ハンナさんから外に出している
メニュー板を受け取り、片付ける。




そっか、俺と一緒に帰るんだ。


今日も、あの家に帰るんだ。

そっか。

それだけのことがすごく嬉しかった。

















幸せな気持ちで眠りについたはずだったのに。




「うわぁぁっ!」



え……?あ…俺の声…?


その日の夜、
そんなに大きくはなかったはずだけど
自分の叫ぶ声で目が覚めた。

もうずっと、こんな事なかったのに。


「…久しぶりだな。」


汗もかいていたし、
とりあえず水を飲もうと起き上がって…


ドアにもたれているユノさんに気づいた。









よろしくお願いします。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

コメント

非公開コメント